あの時と同じ道、そしてあの時と同じメコン川に沈む夕日を

「デジャブ?」

あれから、10年の時が流れていた
あの時と同じ道、そしてあの時と同じメコン川に沈む夕日を
久し振りに訪れたラオスの首都、ビエンチャンという街

あの時は、このラオスという国に奔放され続けた

当時バックパッカーだった私たちは、ラオスにはタイの北部の小さな街からスローボートで入国した

このスローボートが曲者で、丸二日間、メコン川の景色を眺め続けるという、とてつもなく退屈な船の旅だったのだ
あの時と同じ道、そしてあの時と同じメコン川に沈む夕日を
メコン川を眺めながらの船旅は、さぞかし素敵な船旅だと思いきや、さすがに丸二日間となると飽きて当然なのかもしれない

まだあの時の私たちには、川を眺め続ける事で幸せを感じ取れる域に達していなかったのかもしれない

あの頃のスローボートは座る場所も板が置かれてるだけのイスも無いようなスローボートで、本気で修業したい人にしか不向きなスローボートだった

数年前、友人がタイからラオスに渡るスローボートに乗った時にはちゃんと椅子があったようなので、今スローボートでタイからラオスを訪れたらいくらかマシかもしれないが、私たちにもう一度スローボートに乗るという選択肢は無かった

そう、スローボートでタイからラオスへ渡る際に立ち寄る小さな村があった

その村は、冬至は電気も夜は使えずに、その村に唯一あったメコン川沿いのレストランも真っ暗な所で食事した記憶がある

料理が出てくるまでに、一時間以上待たされたが、その後インドを訪れて、オーダーした料理が一時間出てこない事は当たり前の事なんだという事を知る事になった

ラオスは大好きな国でもあり、大嫌いな国でもあった

なぜなら、10年前にラオスを訪れた時にはラオスにいる間中私はずっと体調不良だった
あの時と同じ道、そしてあの時と同じメコン川に沈む夕日を
蟻入りのジュースから始まったラオス

レモンジュースを村の食堂で注文し、暗い電気の中よくよく見てみたら、レモンの粒粒だと思ってた粒は、なんとありんこだった…

そして、何週間か滞在したラオスだったけれども、

私が食べられたのは、シンダートと呼ばれるラオス式の焼肉、そしてレモンタルト、バケットサンド位だった

そういえば、あの頃ラオスでよく見かけた「マッシュルームあります」
というメニューは、今はまったくもって見かけなくなった

10年ぶりに訪れたラオスは、かつての面影はまるで何もない、開発が進んだ大都会そのものだった

あの時は、メコン川沿いの屋台もまばらで寂しい感じがまた良かったのに

今では、屋台が綺麗に立ち並び、連なりを見せていた

当時は、テントの屋根なんてなく、ただ単にそのまま炎天下の中メコン川で採れた魚が塩焼きにされていて、

串刺しの焼き鳥やカオニャオが無造作に並べられていただけだった
あの時と同じ道、そしてあの時と同じメコン川に沈む夕日を
家でおばちゃんが作ってきたお惣菜類が鍋ごと並べられてるだけだったはずなのに、今では屋台でその場で調理してくれるようになった

驚いたのが、なぜだかケバブ屋がたくさんいた事だった

たこ焼きもあり、天ぷらもあり、もう私が知ってるラオスなんて、跡形もなくなっていた

あの時からたくさんいた、メコン川にいる野良犬たち、そしてトッケーヤモリは健在だった
あの時と同じ道、そしてあの時と同じメコン川に沈む夕日を
あの頃宿泊した宿は、どこの宿だかは覚えていない

ビエンチャンの一軒目に泊まった宿は、お風呂が壊れててお湯が出ず、二軒目に泊まった宿は、南京虫は出るは窓は無いわ狭いわのバックパッカー宿だった事だけは確かな事

次にラオスに来る時は、メコン川が見える宿に泊まりたいと何年も思い続けていた

あの頃出来なかった事を、バックパッカーを辞めた今、ようやく出来るようになった

あの頃は、宿は足で探していた
あの時と同じ道、そしてあの時と同じメコン川に沈む夕日を
今は、ネットで簡単に予約できる

しかも、要望まで書いて予約する事ができる

今回、どうしても宿泊したい部屋があった

メコン川沿いのメコン川に昇る太陽も、メコン川に沈む夕日も見える部屋だ

ラオスに行かなければならない事が決まった時に、すぐに部屋は予約した

しかしながら、さすがラオスだ

宿についたら、その部屋は前の人が連泊しちゃったから無理なの。なんて平然と言われてしまった…。

その宿には、私が宿泊したかった部屋は、一部屋しか無かったのだ
あの時と同じ道、そしてあの時と同じメコン川に沈む夕日を
スイート二部屋の宿で、もう一つのスイートに宿泊する事になった

これはこれで良い部屋だったけれども…

ここで文句を言っても、どうにもならない国なのは百も承知だった

またここに来いと神様が言ってくれてるのかもしれない

一番宿泊したかった部屋ではないけれども、私の長年の夢は叶う事となった

メコン川を観ながらくつろぐこと

メコン川をしながら読書する事
あの時と同じ道、そしてあの時と同じメコン川に沈む夕日を
ずっと私が書き続けてきた夢が叶った瞬間だった

そして、偶然あの時と同じメコン川を沈む夕日を観ながら、ラオスの焼肉、シンダートを食べる事になった

あの時宿泊した宿は覚えてないので、本当に偶然だった

広い広いメコン川沿いにあるお店で、たまたま宿の人に「シンダートが食べたいんだけどどこがいい?」と聞いて教えてもらったお店だった

道を歩いてる時に、デジャブした

そして、あの頃の記憶が鮮明に頭の中に思い描かれた
あの時と同じ道、そしてあの時と同じメコン川に沈む夕日を
あの時食べたお店は、こんなにも変わってしまったラオスのビエンチャンで何も変わらず営業していた

ただ一つ変わったのが、シンダートのだしを入れるやかんが綺麗になっていたという事

ただそれだけ

あの時、座席のまわりにたくさんいたヤモリファミリーも、あの時と同様たくさんいた

あの時食べて感動したシンダートの味だった
あの時と同じ道、そしてあの時と同じメコン川に沈む夕日を
バスでラオスに来る体力は今はもうないので、今回は飛行機をチョイスしたけれども、

もしも体調が復活したら、もう一度だけボートの旅を選ぶのもありかもしれない

なんとなく、あの頃の事を思い出してメコン川をみながら浸ってみたラオス、ビエンチャン

旅の楽しみは、いくつもある

旅の準備をしながら旅を妄想してる時

そしてまさに旅をしてる最中

旅が終わった後、旅を振り返る時

旅は、何ものにも代えがたい経験だ

先日、とある人に言われた事がある

「なんで贅沢はしないんですか?」と。
あの時と同じ道、そしてあの時と同じメコン川に沈む夕日を
私たちにとっての贅沢は、まさに旅そのものだった

他の事には、あまり興味がないし、特に物にお金を使うつもりは一切ない

むしろ、物は今でも減らしたいと思ってる程だ

身軽になって、本当にバックパックだけにすべての私物が詰め込めるようになりたいと思ってる程である
あの時と同じ道、そしてあの時と同じメコン川に沈む夕日を
経験はお金を出して買いたいと思う

人生を豊かにしてくれるものだから…

あの頃からの夢が叶い、これでようやく次のステージに行けそうな気がする

そんなことを思えたラオス、メコン川沿いの街

あの時と同じ道、そしてあの時と同じメコン川に沈む夕日を
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